円安やロシアによるウクライナ侵攻で昨年から大きな変化が起きているエネルギーや資源の価格。物価の上昇や光熱費の値上がりが家計や経済を圧迫していますが、農家にとっては肥料価格の高騰も深刻な悩みになっています。特に価格が上がっているのが化学肥料で、この一年で二倍くらいまで急速に値上がりが進みました。最も使用量が多い窒素肥料が石油由来であること、化学肥料の主な輸入元であった中国やロシアなどからの供給が停滞していることが原因です。農業経営ではコストの1割程度が肥料代と言われますが、これが倍になっていると考えると影響の大きさが想像できます。
みかんの樹がしっかり実をつけるのには、適切な施肥管理が必要不可欠。地味に見えてとても重要なポイントです。
無茶々園では果実を収穫する成木では使用可能な肥料を植物や動物由来の有機質肥料に限定して柑橘を栽培しています。化学肥料ほどではないのですが、円安による資源価格の高騰や化学肥料の代替え需要によって有機質肥料も値上がりしており、無茶々園の農家にとっても思わぬ経費の増加になっています。
肥料価格の高騰は国としての対策が必要な状況になっており、直近では肥料代の値上がりの一部を補填する事業がはじまっているほか、「みどりの食糧戦略」とも関連して化学肥料の輸入に依存した農業の形態を少しずつでも転換していく方向性が示されています。その一つの方策が国内や地域にある資源の再利用。身近な有機資源を活用することで輸入への依存度を減らすとともに、過剰施肥を抑えて肥料由来の温室効果ガスである一酸化二窒素も削減しようとする考え方です。
さて、無茶々園で使い続けてきた肥料の一つに、醤油を作る際に出てくる発酵残渣(醤油粕)をベースにしたボカシ肥料がありました。ボカシ肥料とは動植物由来の素材に発酵工程を加えたもの。発酵によって様々なアミノ酸が含まれ、分子が小さく植物が利用しやすいかたちで畑に供給できます。この肥料を作ってきた松山市の肥料工場を昨年末に取得し、今年から無茶々園として醤油粕を利用した肥料つくりをはじめています。
ねんがんのひりょうこうじょうをてにいれたぞー!
醤油粕は大豆を主原料にした植物性の素材で、そもそも醤油を作る際に発酵が進んでいます。一般に肥料の主要素として考えられている窒素成分は少なく、アミノ酸が豊富で炭水化物が多く有機栽培向けの肥料です(ただし、塩分が懸念材料ではありますが)。実際にこれまでもみかん作りに使ってきましたが、夏から秋の果実肥大が進む時期に施用すると果実の糖度を高める効果があると感じています。
もともと肥料価格の高騰や農林水産省のみどり戦略とはまったく関連なしに進めてきたのですが、ちょうどこの情勢にも合致した取り組みにもなりました。これ以外にも、いま明浜にあるジュース工場から出てきた柑橘の搾汁残渣を堆肥化する試験もはじまっています。無茶々園でも以前から自前の肥料や堆肥の製造を目標にしてきましたが、有機物の循環や地元での供給の仕組みつくりがにわかに進みはじめる一年になりそうです。