改めて、無茶々園は柑橘農家が集まった生産者のグループとして、地域的に環境保全型のみかん作りに取り組んでおります。1974年に狩江地区の若手後継者グループの活動として無茶々園がはじまり、法人格を設けたのは1991年の農事組合法人無茶々園設立にさかのぼります。いまは農家だけではなく様々な活動に携わる人たちの協同組合のかたちをとっているなか、変わらず中心となっているのは農家です。
年に一回の総会のほか、隔月での定例会や役員会、みかん栽培をテーマに集まる生産部など、農家が集う機会もたくさん設けており、農家同士や事務スタッフとのコミュニケーションを欠かさないようにしています。なかでも、顔なじみの農家がそろう地区会ではもっとも濃い話ができます。
農家宅で行われた地区会のようす。
無茶々園があるのは愛媛県西予市のなかでも旧・明浜町のエリア。海に面した小さな入り江が連なる地形で、入り江ごとに俵津、渡江、狩浜、高山、宮野浦、田之浜と6つの集落が形成されています。それぞれが山によって隔てられているため集落ごとのまとまりが強くなり、産業や文化、言葉の特徴も少しずつ違いがあり、それぞれ独自の雰囲気を作り出しています。
無茶々園の地区会もこの集落単位で開催しています。農家数の少ないところでは2つの集落でまとまる地区もあり、隣接する宇和島市の吉田地区とあわせて6つの地区会を行っています。農家の経営主だけの地区もあれば、家族で参加する地区もあり、公民館を借りたり、農家の家や倉庫で開催したり、集まり方をとっても集落ごとの色が出ます。
地区会では事業や経営の報告、栽培に関するポイントの共有、役員の選出など無茶々園を運営していく上で必要な内容を協議するほか、農家からもめいめいに意見や要望が出てきます。おなじ集落に住んでいる農家の会でもあり、全員が集まる場に比べて声があがりやすいのが地区会です。日中は農作業を優先するため、地区会が行われるのは夕方から夜にかけて。議事をひととおり終えると決まって飲み会に移行します。みかん作りの話だけではなく、それぞれの近況を報告しあって親睦を深めます。新しい品種への挑戦や目の前にある課題への対応など、近い距離にいる農家同士で目標を新たにする場でもあります。
議事終了後は懇親会。これも大事な時間です。
さて、去る5月には一週間かけて地区会を開催しました。今回は昨年から発生している難しい病害虫への対応や地区から選出してきた役員のあり方についての協議など大事な議題がありました。普段は定例会といって一か所で集まる会を行う時期なのですが、なるべく多くの農家に集まってもらうために参加率の高い地区会の開催となったわけです。
無茶々園を立ち上げた当時の若手農家も、いまや老人会に加入するほど年月を重ねました。当初は夜な夜な集まっては酒を交わしながら実のある話になったりならなかったり。往時の雰囲気を残して続けている活動のひとつが地区会かもしれません。後継者が中心になって若返る地区もあり、メールやSNSなどコミュニケーションの取り方もずいぶんスマートになったものですが、昔ながらの地区会も変わらず大事にしていきたい文化です。
~難敵病害虫の発生について~
明浜では昨年の秋にこれまでに発生が見られなかった新たな害虫による被害が発見されました。対応が難しく出荷への影響も大きい害虫であり、被害の発生や拡大を防ぐために地域全体での対策が必要になっています。一部の品種については一定の農薬防除を強く推奨しなければいけなくなっており、無茶々園でも当面のあいだ、特に温州みかん・愛媛果試28号・ポンカンでは最低限の防除対応を推奨することになりました。
農薬使用回数を慣行栽培の50%以下とする栽培基準の範囲内での取り組みで、伊予柑・甘夏・河内晩柑・レモンなど大部分の中晩柑類ではこれまでの栽培条件と変わりありません。農家にとっても大変悩ましい問題です。柑橘栽培を継続していくためにも、どうぞご理解くださいませ。