お知らせ

ただいまとおかえりの場所

2024.07.10

気付けば14年目。私は新潟でカメラマンをしています。無茶々園さんが『yaetoco』を始めた頃からのお付き合いです。伺うたびに「おかえり」と言ってくれる場所ができたことは、私の人生の大きな出来事の一つ。コロナ禍を経て今も続く関係がとてもありがたいです。

 

初めて伺ったのは2011年の明浜のお祭りの時。「あの景色は感動するよ。」と事前に言われ「そんな大袈裟な、田んぼ見て育ってますから。」なんて気持ちで向かったことを覚えている。山道を進み、野福トンネルを抜けて進んだ先に見えた景色に「わー!!!」と思わず声が出た。越後平野を見て育った私にとって、山の法面にある石垣の段畑と眼下に広がる瀬戸内海は、今まで見たことのない素晴らしい風景だった。山があり、人の暮らす町があり、海がある、全てが繋がっている場所。
その後、向かったのは明浜町狩浜の一軒のお宅。「明日はここに泊まります」と宿泊先を伝えられ「ま、こっち座って、飲んで食べて」と豪華なお料理が並ぶ部屋へ通された。初めてお会いする方々に囲まれ、勧められるままにお酒をいただいた。社長の大津さんのご自宅だった。戸惑いながらも皆さんが集まる宴会に参加。中にはお祭りを見に来た観光客もいる。誰でもウェルカム。コンビニもないこの地域にたくさんの人が集まって祭りを楽しんでいる。まさに平和そのもの。そして、初めて見たお祭りは、方向が定まらず突然迫り来る『牛鬼』が怖くてたまらなかった。

 

狩浜の秋祭りといえば牛鬼。はじめて見たときはとても驚いたようで・・・

 

年に一度のお祭りから始まったご縁は、ありがたいことにその後も続いており、宿泊先は無茶々園の農家でもある川越さんのお宅。「お邪魔します」と玄関で声をかけると「ただいまでしょ」と言われ「ただいま」と言い直すと「おかえり」と返ってくる。コロナ禍明けに伺った際には、抱き合って涙した。町で撮影していると「雅子ちゃん、元気だった?これ持ってって食べて」とたくさんの方が声をかけてきてくれ、農家さんの撮影に園地へ行けば、山を降りる頃にはいろんな種類の柑橘を抱えきれないほど持ち帰る。みなさんとても温かく迎えてくださり、毎回、夏休みに親戚のいる場所へ遊びにきた子供のような気持ちになっている。間違いなくここが私の第二の故郷。

 

サスティナブル、SDGs、パーマカルチャー、オーガニックなどの言葉が流行りのように飛び交う昨今。おしゃれな感じもし、難しそうな大きな話に聞こえるけれど、この無茶々園は、当たり前のように土地のことを想い50年も前から取り組んで来ている。この土地で生まれ育ち、共に生きてきた人達が、さらにこの土地を活かそう、残そうと思い立ち、次の世代へ想いを繋げてきた。足るを知り、然もありなんと起こることを受け入れながら、自然と向き合う姿は本当にかっこいい。関わらせていただいていると、私までかっこよくなった気になる。でもそれでいいと思っている。撮影を通していろいろな面を見せていただいた。生き方、暮らし方、続く命の営み。もちろん柑橘にも詳しくなったし、それぞれの柑橘の剥き方、食べ方もマスターした。みかんの花が白く可愛いことも知ったし、梅干しの漬け方も学んだ。獲れたての釜揚げちりめんの美味しさも知っている。ほら、私も十分かっこいい。

 

内藤さんの撮影は、みんなを笑顔にしてくれる。

 

今年の元旦にあった地震で私の実家のある地域も被災した。震災後に届いた天歩には、被災した方への温かい言葉があり、私に届いた天歩には、仲良くさせていただいているスタッフから手書きのメッセージ。遠く離れた場所で想ってくれる人がいる、それだけで励まされることがたくさんある。土地を想い、人を想う。この優しさが無茶々園なんだ。

このご縁をこれからも大切にしていきたいと思っています。またお伺いする日を楽しみにしています。みなさん、どうぞお元気で。

 

内藤雅子さんのお姿。これからも素敵な写真をよろしくお願いします。

pagetop