創設者 片山元治コラム
「わしらの農業」
column

アドリブ

2012.07.25

 以上、キューバを含め、後進国で有機農業がやれない事情を説明しました。やれないというより意味がないという方が良かったかもしれません。そして、それを感じはじめた時点で、日本農業を守れを止めました。世界の家族農業と地域文化を守れ!と声高く叫ぶことにしました。

 どこの後進国のトウモロコシよりもアメリカのトウモロコシの方が安いようです。そして、卵の値段は何処の国も似たようなものです。このことは、世界の農 業がアメリカの穀物戦略の支配下に置かれる可能性があると言う事です。アメリカがズッコケたら人類が滅亡していたと言う事になりかねません。

 農産物は多様な地域経済の中で流通させるべきです。

 世界の経済は、一段と高等動物のように複雑になって来ています。アメリカ経済が潰れたら、世界の経済が再生しない。ある一分野の経済システムが破壊されたら世界経済がパニックになったなんて事は、いまから時々起き得ると想定できます。

 経済・生活は本来は多様であった。ミミズのように壊れても再生がすぐできた。東西の体制が崩れ、世界的にシステム化、系列化されつつあるなかで、複雑系 経済は一度壊れると人間の体のように再生が不可能になってきます。実は単純化しているのです。世界中の人が世界中でナイキの靴を履いてぞろぞろ歩いている のを見るとゾーっとしませんか。情報や交通の発達から、文化の単純化も進んでいるようです。

 生物の多様性も重要ですが、文化の多様性も同様に重要だと思います。同時に経済の多様性も必要なのです。多様性の考え方から見ると、世界の家族農業を守 れ、世界の地域文化を守れと言う事は、生物、文化、経済の多様性を大切にしようと言う事です。それを実現するには、大手商社を介さない、世界の家族農業の 緩やかな事業連帯が必要です。連帯した事業は市民ビジネスとして、社会的責任を持って運営する事です。

 私達は、既にベトナムの一地方で家族農業の国際事業連帯の実験をはじめました。後進国の近代化は残念ながら先進国の資金が流入しない限り無理なようで す。そして、とかくバランスの狂った近代化が進みがちです。どの程度うまく、後進国の地域農業を近代化に軟着陸できるか。それが先進国農家の仕事でもある ような気がします。なぜならば、異常気象、温暖化、化学物質汚染の影響を一番先に受けるのは世界中の農家の生活です。アメリカを中心とした巨大経済にもの 申せるのは、地域経済の主役である農業者以外にないと思うからであります。

 皆さんも、「日本農業を守れ」と言うよりも、「世界の家族農業と地域文化を守れ」と言う方向に変えて貰えませんか。そして、環境に優しい農業の技術を提 供し、それで出来たものを自分達の手でどんどん輸入して、商社のルートを断ち切る事です。それを活動資金として、農家と消費者の為の流通網の構築をするの です。「身土不二」。国内で作った食べ物のは国内で食べるのが一番です。輸入国は余ったもののお裾分けです。食を中心とした地域経済をうまく動かせる仕組 みを作る事です。これがうまく回り出すと、国際的農家間の話し合いが出来るようになり、無節操な輸出入はなくなると思います。

 私はミカンの専門です。梅・生姜・茶・米・牛・鶏・豚・野菜等少しずつ農業のその道の匠達が集まり始めました。流通の匠・生協作りの匠・情報の匠・物売 りの匠なんでも誰でも結構です。日本のいろいろな匠が集まれば、インドシナ半島に何か為になる事の手伝いが出来ると思います。そのうちこのシステムを キューバに持ち込めば良いのです。

 今、私達がやろうとしている事は、100年かかっても出来ないかもしれません。しかしこれは私達のユメとロマンです。私達の代で出来なければ息子達にもやってもらおうと思っています。息子達の代に出来なければ孫達がやれば良いのです。
 その間に人類が滅亡しない事を祈ります。

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