「地球の進化は文明の発展ではなく、生物の多様性だと思います。多様な生命体の共存だと思います。生物の種が単純化するようになれば、宇宙船地球号は進化から滅亡に向うといえるのではないでしょうか。文明の後遺症である、温暖化、砂漠化、異常気象、環境ホルモン等による種の単純化が始まったように思われます。」
(1)食べ物の循環を考える
かつて、農薬も化学肥料も無い時代に世界で一番大きかった都市は江戸で人口約50万だったと言う話しを聞いた事が有ります。その最大の要因は、人の出す糞尿のリサイクルがうまく出来ていたからだと聞きました。
私も、エントロピーを最大限下げながら化学肥料も農薬も使わず、大都市の人口を維持するならば、人糞尿を有効に使う以外に無いと確信しています。エネル ギーをかけて浄化するのは間違っていると思います。しかしながら、現状の常識では、キューバも人の糞尿を有効に利用する事は無理だと思います。近代都市に おける、残飯、食品工業残さ等のリサイクルは、高度のリサイクル施設のほかに、高度の知識集団、高度の検査体制が必要です。ハバナは一応近代化された都市 です。中途半端なリサイクルは貧乏人を犠牲にするだけです。
残飯をリサイクルさせるには堆肥化する施設が要ります。その前にゴミの分別が大切です。プラスチックや化学物質が多くなっている現状の中で、分別出来る ようになるには相当の都市住民の教育が必要です。それが出来なければ畑に入れるのは危険です。化学的に汚染された農地は二度と戻りません。農村が近く、リ アカーや、馬車で運べるのなら、個人でも集めれましょうが、都市が大きくなって、リアカーや、馬車で運べなくなり、車になると個人レベルでやれなくなり、 国が補助しない限り残飯のリサイクルはコスト的に動かないでしょう。
家畜の糞の必要量を考えると、100haの畑に、生糞を4トン程度入れるとして、8~10万羽の鶏が必要になります。醗酵させ、完熟堆肥にするとすれ ば、その倍以上の鶏糞が必要になります。養分の一番多い鶏の計算ですから、豚、牛になるともっと必要になるのではないでしょうか。キューバの砂糖きび畑に 十分な堆肥を入れるとすれば鶏を何匹飼わなければならないか。これらの、家畜を飼うには彼らの体重と比べて、8倍以上の飼料が必要になります。その為にど れだけトウモロコシを作らねばならないか。そのトウモロコシ畑にいれる鶏糞を作るためにもっと飼わなければならない。牛は年中放牧をしています。放牧場の 糞をいちいち集める事は不可能ですから堆肥にはならないでしょう。後進国において、少なくとも畜産商品が国外に売れない限り、大量に家畜を飼うと言う事は 不可能です。また、自給以外に農作物を売るのなら化成肥料が必要になります。
農家には、それぞれの家で、豚、トリなどは放し飼いで少量づつ飼っております。餌を節約する為放し飼いにするのです。高たんぱくな餌を与えない為、あま り臭くはありません。この家畜の糞が、3a程度の個人栽培、自給農場の大切な肥料源です。化学肥料が無いキューバはこれが最大の肥料源でしょう。この肥料 源は自給用に使うなら十分の肥料。この肥料で販売作物を作ったなら、自給が出来なくなる程度の肥料です。つまり、キューバでも、何処でも農家には自給出来 る仕組みがあります。その仕組みに売らなければならない経済栽培が入ってくると、どうなるかはどの国も似たような物です。
(2) 農薬を必要としない農産物の育種が必要
日本で、0.1%しか有機農業が出来ない最大の要因は、育種が、美味しくて量の取れるもの、農薬を使っても良いものという条件で開発されたためです。その品種を使っての有機栽培は基本的に無理があるのです。
それでは在来種のものをと言う事になりますと、栽培地域が限定されたり、生産量も落ちます。
遺伝子組換えでない、有機農業向きの品種の開発が必要です。有機栽培用の品種が開発されない限り、農家は栽培皆無のリスクを抱えて栽培しなければなりません。貧しければ貧しい程、農薬からの開放は不可能です。
(3) 非農家の環境意識や農業に対する理解が必要
環境に優しい農業をやって行く為には、消費者との相互理解が必要です。都市の生活者が、環境に理解がなければ前に進みません。生協のような仕組みも必要です。