おかげさまで、今年で無茶々園は50年目の春を迎えることができました。これも皆様方のおかげです。ありがとうございます。一説では200年続いた地の時代から風の時代に移行したと言われています。地の時代とは物質(三種の神器)、所有(家)、成功(出世)、組織(終身雇用)など目に見えるものを手に入れた時代であり、風の時代は目に見えない情報、体験、循環、幸福、個人らしさを求め、資本主義から文化の時代への変化とも言われます。
無茶々園もこの50年で組織化し過ぎたように思います。大きくなるとどうしても分業となり、個人が組織の歯車の一つになりがちですが、もともと百姓とは百の業を成すもの。小さいけれども自らの発想と手で完結され、小さいけれども幸せを実感でき、風の時代らしい自立した個人が集まった100年続く組織へ移行しなければならないと感じています。
ウクライナ、パレスチナ紛争、地球沸騰化、円安の影響で、エネルギーや資材、食料など生活に必要な物資の価格高騰が続いています。また最低賃金が愛媛県でも59円上がり956円となり、農家経営における一層の負担が顕著となったばかりではなく、都市部や国際間の賃金格差による働き手の確保が益々厳しさを増しています。昨年から商品価格を変更し生産者手取りを上げてはいるものの、持続可能な農業経営を維持するまでには程遠いと言わざるをえません。生協はじめ多くの取引先はコロナ需要が落ち着いて、コロナ前の停滞期を迎える状況が鮮明になりました。その上で販売価格の値上げに踏み切ることは経営不振につながることも予想されますが2~3年は覚悟をもってやらなければいけないと考えています。消費者の皆様にはご理解いただけますと幸いです。
長期的に見れば日本の農家数や生産量の減少する一方で、世界の人口増や円安などによる輸入食料の入荷減(日本の買い負け)を受け、農産物価格の上昇は必至。大きなチャンスと前向きに考えるべきだと思います。また生活者として考えると令和の米騒動が未だに続いているように、命を育む農産物(食料)が今までのように簡単には手に入らなくなることも視野に入れ、確保することを考えなければならないでしょう。「産直で米を購入していて、毎月同じ値段できちんと送ってもらっていたので、まさか米がスーパーにないとは夢にも思っていなかった。産直していてよかった。」とおっしゃった方がいました。「産直」や「食料自給(食料安保)」の意味を本当に真剣に日本国民が考えなければいけない時代でもあります。SDGSやエシカル消費といった話題が日常化しつつあり、若年層を中心に他者への配慮や多様性の尊重、環境活動など持続可能性を尊重する機運が高まりつつあり、都市生活者の皆さんとの連携強化・共感経営によりこの困難を乗り切り、楽しい明日が来ることを信じたいと思っています。
2024年は大不作でした
さて、無茶々の里は昨年もいろいろありました。まず、2024年産柑橘の大不作と食味が今一つだったことです。無茶々園だけでなく多くの柑橘産地で言えることですが、愛媛県農林水産研究所でも30年間で最も悪いのではないかと評しています。原因としては、一昨年の大干ばつの影響で隔年結果したことや5月の開花後のカメムシの大発生で落果したこと。秋の高温・雨で食味が上がらなかったこと。そして追い打ちをかけるようにイノシシや鳥の大襲来が続いています。「過去にはなかったことばかり」が重なった結果であり、本当に農業生産は計画どおり行かないものだと思い知らされた1年でした。もし今年も同じ条件が続けば、みかん栽培からの撤退を判断しなければいけない、そんな歴史的な年になるのかもしれません。そうならないことを願っています。
次に、宇和町皆田地区に新物流センター建設に取り掛かり、2025年4月稼働に向けて順調に進んでいます。新しい拠点事業の始まりです。その他、海の環境活動として2023年9月より取り組み始めた藻場バンクの活動は、2か月に一度程度藻場内のクロメが光合成しやすいよう清掃、メンテナンスを行ってきました。2024年6月の調査では藻場礁の周りに新たなクロメの繫茂が確認できました。藻場礁の中から胞子が飛散し、成長したものと考えられます。地道な活動ですがうれしい成果でした。今後も見守り、増やしていきます。
また福祉事業では、事業継承したグループホーム明浜館の運営も順調に推移しています。ただ、高齢化による人口減少や重労働などの理由で介護の担い手不足がここ明浜でも明らかな課題となりました。海外農業技能実習生の受け入れ経験を活かして、ベトナム介護実習生4名(1名増)が共に働いてくれるようになりましたが、今後は無茶々園の里に住みたい都市生活者の移住促進も進めたいと考えています。
今年のスローガン
今年の無茶々園は理念や原則を再確認し、環境負荷を伴わない持続可能な農業と地域社会を大勢の参加によって実現することを目標に「2026年4月、50周年記念式典開催に向け、100年続く組織を宣言できるよう、具体化する1年としよう!」というスローガンに掲げています。そして、昨年立ち上げた7つのプロジェクトを今年度答申する予定です。生産者、職員、役員で検討し、意見反映し具体化できるものから進めていこうと考えています。これまでどおり持続可能な地域社会を創造すること、そしてこれまでにも増して環境にやさしい農業を(カーボンニュートラル・農薬総量削減など)を目指します。
7つのプロジェクト
① 柑橘生産量確保(3000t)
② 農家手取り倍増化
③ 新出荷場建設
④ 新柑橘加工場を活かした加工品開発
⑤ ベトナム事業開発
⑥ 地域に必要とされる仕事おこし
⑦ 50周年企画
さらに、私が提唱しているコミュニティ産直(新しい生産・消費の関係性)の具体化に向け、試験取組をして頂く取引先(地域)を選定したいと考えています。わかりにくいとは思いますがこれまでの産直は生産者と消費者(産地・田舎⇔消費地・都会)やみかんと消費(モノ⇔お金)といった市場を介さない関係性で語られていましたがこれを「地域の提携関係」にするという事です。需要と供給の関係性から一歩踏み出し、田舎と都市で協力関係を築き、モノ・人・お金が循環し地域経済を回す、人々の交流が促進される。コミュニティ産直が無茶々園の歴史的な取り組みとして「世の中のモデルとなりうるかどうか」の実証実験でもあります。
私たちは自分たちの将来を自ら創造し、安心して暮らせる地域を地域住民や行政、都市生活者や世界の人々と共同して作る必要があるのです。
想像してみてください。この西予市明浜町の2030年の姿を!時間がゆっくり進み、だれもがのんびり生活している。ロボットや海外の人達もいっしょに生活している。リアルとバーチャルが共存し、人々は豊かな暮らしをしている。旅行で農村へ、都市へ、海外へ仲間のみなさんに会える。そんな社会を実現するためにも、多くの方たち(都市生活者や世界の人々)と「共感」し、つながることで少しずつ世の中が変わっていく。目の前の「気候危機」は待ってはくれません。今からやれる取り組みから共に始めましょう。
無茶々園は50年が経過し、グループ全体で職員148人、関係する生産者156名、海外技能実習生21名で新年をむかえました。無茶々園はこれからも「10年、20年後の未来の子どもたちのために、小さな多くの種まきをし、日本一の町づくり集団」を目指します。無茶々園でよかったと言えるように!
どうか、皆様もこの田舎再生運動に参画して頂き、活力ある日本にしましょう。
株式会社地域法人無茶々園 代表取締役 大津清次