産物紹介

かぶすの話

2025.01.25

日本国内で柑橘の栽培が広がり、現在の産地が形成されたのは昭和30年代以降のこと。たとえば愛媛県での柑橘の栽培面積は昭和30年時点には4,000ha程度でしたが、昭和44年には5倍以上となる24,000haに増え、急速に栽培が広がったことがわかります。無茶々園のある明浜もそんな柑橘産地であり、みかんの本格的な歴史は60年くらいということになります。いまや柑橘は経済栽培として取り組まれ、温州みかんをはじめとして食べやすくて甘い品種が栽培のほとんどを占めています。

 

一方ではもっと昔から栽培され、生活の中で親しまれてきた柑橘もあります。江戸時代から明治時代にかけては、いまにつながる温州蜜柑だけではなく、夏橙、クネンボ、文旦など多様な柑橘が作られていたそうです。甘い果肉を食べるだけではなく、果皮の香りと酸味のある果汁を楽しむ香酸柑橘も古くから土着の品種として作られてきました。たとえば、高知の柚子、徳島のすだち、大分ではかぼすと、地域を代表する香酸柑橘があります。そして明浜で作られてきたおなじみの香酸柑橘といえば“かぶす”です。

 

 

かぶすってなんだろう

“かぶす”ですが実ははっきりとした区分が難しく、一般的にはダイダイ(橙)もしくはその一種とされるようです。愛媛のローカルな呼び名なのかもしれません。おそらく枝代わりの多い柑橘類のこと、地域で引き継がれてきた特徴のあるダイダイが各地に存在しているのではないでしょうか。ダイダイは香酸柑橘ではありますが甘いイメージのあるオレンジに近い品種です。インドを原産として東西に伝わっており、ヨーロッパではビターオレンジとよばれるグループを形成しています。ちなみに、名前の似ている“かぼす”は柚子の近縁種ですので別系統の品種ということになります。

 

明浜では主に果汁を酢ものの材料として楽しんでおり、かぶす果汁に醤油と薬味を加えたポン酢は明浜の冬には欠かせない味。もう少し調べてみると、そのまま果汁を使うだけではなく様々な用途に使われているようです。たとえば、ビターオレンジはイギリスではマーマレードの主要な原料になっている。フランスのリキュールであるコアントローやグラン・マルニエはビターオレンジの果皮で香り付けされる。ダイダイの果皮を乾燥させた橙皮は中国の伝統的な漢方に用いられる。しめ飾りや鏡餅など伝統的な日本の正月飾りにも古くから使われている・・・。地域で愛される土着の品種でもありながら、世界とのつながりを感じさせてくれる奥深い柑橘です。

 

今後に期待です

このかぶす(ダイダイ)、いま少しずつ苗木を植えて増やそうとしています。苗木は仕入れているためもともとにあったかぶすとは微妙に違う形質かもしれませんが、ダイダイには変わりありません。本場にならって果皮と果汁で作った『橙オレンジマーマレード』を商品化しているほか、新しい加工品の開発や、化粧品などの原料としての販売にも取り組み始めています。無茶々園にとっても温故知新のかぶす。このご時世、鳥獣害や病害虫に強いのも大きな魅力で、今後明浜での柑橘栽培にとって個性的な脇役に育っていくかもしれません。

 

 

橙でマーマレードをつくろう

【材料】

・橙(かぶす)5玉(約1㎏)

・砂糖 適量(皮と実の重量の40~50%程度)

・搾った果汁

 

【作り方】

①皮を洗い半分に切ります。果汁を搾り、皮から内皮を取り除きます。

搾った果汁は後で加えるので忘れずに取っておいてください。

②内皮を取った皮を薄切りにします。有機栽培につきものの皮が固いカイヨウの部分などは取り除きます。

③薄切りにした皮を3回茹でこぼしたのちに、ザルを使ってお湯を切ります。

④砂糖と搾った果汁を加えて煮詰めたら出来上がり。煮詰めすぎると出来上がりが固くなります。

果汁が半分ほどになったら一度様子を見ることが大切です。

※種をお茶パックに入れて一緒に煮詰めるとペクチンの作用でとろみがつきますよ。

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