創設者 片山元治コラム
「わしらの農業」
column

国際田舎の連帯を目指して

2012.07.25

 太陽の下でまともな農業をやるには、緑の地球を守らねばならない。その為には、都市を包囲する世界の田舎のネットワークが必要。弱小な我々には当分2、3の国の特定の場所に絞り交流を深める。
 無茶々園の国際交流 「世界八八ヵ所田舎同盟を目指して!!」
 中国・韓国・タイ・ミャンマー・ネパール・インド・バングラ・フィリッピン・アメリカ・ブラジル・カナダ・ペルー・イギリス・イタリア・スペイン・フラ ンス・ドイツ・ノルウェー・ジプチ・ゼネガル・ガーナ他にもまだかなりの国があると思うが思い出せない。よくもまあこんなに黒くピカピカ光る人がおんなさ るもんだと感心したこともある。我が無茶々の里を訪れた外国人は100人どころではない。生まれて初めて手の届く近さで、マジマジと見入った私のおっかさ んは、「こんな毛唐を連れてきおって」とおどおどしていたが、今じゃ「お前のへたくそなイングリッシュよりワシのボディーラングェッジの方がしっかりわか ちょるわい」といって、結構楽しく付き合っている。
 「戸締まり用心火の用心」「人類皆兄弟」という、どこかのテレビのコマーシャルがあった。どうも、都市の人は、「人類皆兄弟」と言いながら、「戸締まり の用心」をするようだ。やっぱり、田舎人同志の付き合いはいい。戸締まりなど必要がない。裸の心を開いてアルコールを入れれば、「人類皆兄弟」実に、楽し いものだ。
 我が明浜町には、明浜町青年海外派遣協会なる組織があり、すでに数十名の研修生を海外に派遣しています。私も6年前に小学校6年生の息子と2人で40日 間の太平洋一周の精貧旅行に行かせてもらいました。戒厳令下のタイ国をはじめ、命懸けの親子の旅は、当世流行の親子の断絶を解消し、美しい親子の愛を育み ました。その時、身に染みて感じたことは、日本と南の国とではお金の価値と、労賃の違いがひど過ぎるほど違っていたことです。10分の1から30分の1と いったところです。そして、どこの国にも共通して言えることは田舎の過疎化です。人々はお金を求めて故郷を捨て流浪の民となって都市へ流れるのです。日本 も含め、世界中が、国家経済の発展過程で起きる共通問題だと思われます。
 私達無茶々園は、町作りの運動体と自負致しております。ただ、イヴェントや、人の集まる施設を作り、お金を落とさせる町作りはちっと虚しすぎると思いま す。少しのお金と引き替えに、たくさんのゴミと汚された自然。そして、お金に惑わされる心だけが残ります。私達の町作りは故郷の再生です。ここに生まれ育 ちそして大地に帰る。この生き方に胸を張れる心の充実した集落作りです。つまり、資本主義経済に巻き込まれてしまうのではなく一定の距離を保って、非営 利、共同の地域社会資本の充実による地域社会作りです。当面の課題が、農業の集落企業化と仕事の創造、高齢者の集落介護等の問題です。
 今まで多くの外国人が無茶々園を訪れ交流を深めました。町内の多くの若者があちこちのお国で迷惑をバラ播いてきました。もうそろそろ、野次馬的交流を卒 業して、一定の目的を持った交流をしようと思うようになりました。都市を介せず、世界中の田舎が有機農業を中心にお互い助け合いながら自然を大切に、自分 たちのムラを守っていこうと言う、「世界八八ヵ所田舎同盟」を思いつきました。今から100年かけて88ヵ国の特定の田舎と交流を深め同盟を結んでいきた いと考えています。
 その第1号としてフィジーのサナサナ部落とコリカタ部落にしました。取り敢えず二人の若者を招待することにしました。彼らの村は、電気もガスもなく食物 は作るというより出来るといった方がいい、砂糖キビが換金作物の酒を飲む習慣のない村です。ところが、文明文化の情報は、世界の津々浦々迄行き届いている らしく、文明の利器に対する願望は非常に強く、この辺から集落社会の崩壊が何となく見えてきます。
 まさに日本の田舎が辿ってきた道を今、歩もうとしています。原始集落協同体をなんとか無茶々園の目指すような地域社会協同組合に軟着陸できないか、そのお手伝いが出来ればいいのになあと思っています。
 今回、二人のフィジーの若者を招待しました。彼らが来てもう1ヵ月が過ぎました。食物や習慣が違っても若者の順応性には驚くものがあります。我が家の蜜 柑山で農作業を皆でやりながら、日本語を憶え、農業の夢を語り、生活のことを話し、ワイワイガヤガヤやっていると一日がゆったり過ぎ、充実した日が過ごせ ます。その中で、無茶々の里の、冠婚葬祭等の行事に触れ、地域で胸を張って生きている姿を彼らが理解できれば初期の目的は達成できると思うのです。そし て、互いの交流が進めば物流が起き、商流となって行くと思うのです。農業、地域社会を中心とした商流が起きれば永続的地域社会の確立が進むものと確信して おります。

 しかしながら、一つだけ問題があります。滞在許可証の問題です。不法滞在者が後を絶たない現在、滞在許認可が難しい問題であることは理解できます。しか し、農業、田舎の生活は四季を通じて一年がサイクルです。三ヵ月では少なすぎます。一年間の滞在許可がほしいです。

 私達は、民間ボランティア活動の一環として民間にしか出来ない国際田舎間交流をしたいと思っています。国際交流をしている自治体は近くにもあります。 年々交流が派手になり、費用がかかり過ぎて悩んでいるようです。私達は主体はあくまで民間で、自治体が後援するという形をとり、清楚で実りのある交流をし たいと思っています。

 最後に、労働の問題です。労働するとお金がもらえるもので、いつの間にか、お金を得るために労働するようになりました。かって、家族は、親父の仕事、母 親の仕事、子供の仕事、集落の仕事等、皆それぞれの仕事をして家族が成り立っていました。これを共同労働というそうです。

 労働とは、生きていくための行為であると同時に、人生教育、社会教育の場であり、生きる喜びの場であり、奉仕の場でもあります。お金だけに変えられない 多様な価値がある労働、それが、協同労働なのです。地域社会で生活する、仕事をする、それは、協同労働でなければなりません。

 21世紀に生きていける田舎は、高齢者問題も含めて、多様な価値を持った協同労働を如何にきっちりと組み立てていけるかにかかっています。

pagetop