創設者 片山元治コラム
「わしらの農業」
column

「2」 ローカルアジェンダ(地域実行計画)

2012.08.02

市民セクターとはお金、知恵、労力、時間という個人資産を持ちより、協同の原則に則った市民資本による社会的責任を持った事業体が連帯した社会勢力。
対峙するは市場経済、差別化社会(競争社会)

1 全農は市民参加型コミュニテイと田舎コミュニテイーの
  相互依存型農業生産の展開が出来るか

 小泉自民党の行政改革は小さな政府・民間活力・自由競争のもと、弱者切捨て、マネーゲーム路線を推し進めようとしています。農協は自民党の統治維持機能 として各種制度で優遇されて来たが、時代変化に付いて行けず組織疲弊を起こし、小泉路線の重荷となった。(例、農地の荒廃、担い手の激減、闇米、不当表 示、高い生産資材、立ちはだかるWTO交渉、etc.)その結果、農協解体論、小泉改革路線の反体制派の牙城ともなった農協組織の解体に着手し始めまし た。農協合併、自治体合併と準備は着々と進んで居ます。農村の急激な崩壊が見えてきます。商業農業の育成(農政は1992年頃から農業後継者から農業経営 者の育成に変わった。)農業生産の商業化を進めるということです。遺伝子組み換え農産物の生産も商業化が進めば必然の成り行きでしょう。安くても作らねば ならない農産物もあります。健康的視点からの食糧確保はますます、不安定化すると予測します。

 農業基本法が食料・農村・農業基本法になぜ改正されたのか、国政さえも地殻変動が起きたにも関わらず、それよりもはるか以前から全農は地域が、農業が崩 壊する事は読めたはずです。しかし、この世の春と対応してこなかった。私達は改革の進まない、変身の進まない全農・農協と共に沈む道を選ぶのか、世の中の 荒波にもまれながらも隙間を見つけてしたたかに生きのびる道を選ぶのか命題を抱えながら産直運動に取り組んできた。

 全農は農業者の拠り所の組織であるには違いない。私達もそれを信じている。しかし、改革無くして全農に未来を感じない事も実感できる。なぜならば、組織 構造からして全農がつぶれる前に農家はつぶれる。農業で生きようとする農家は全農より一足早い生存競争に突入した。農協は農家の奉仕組織のはずが、改革が 進まない為に収奪組織となっている事を自覚して欲しい。

 協同組合間提携で連帯する生協に新たな力を吹き込むのも全農の任務であろう。しかし、全農は社会的経済勢力の一員として市場経済に対峙してきたのか。全農は市民セクターの一角を担えるのか。現状では想像だにつかない。とても考えられない。

 私達は全農が農業者の代表組織として反テクノファシズムの砦として再生すれば喜んで合流するだろう。農村革命の時代にしなやかな変身が出来ない全農と心 中するわけにはいかない。改革できない部分を外部に放出する(国の民営化も同様)、それも全農改革ではなかろうか。

2 経験主義から仮説主義へ

 農村の集落機能は過疎と高齢化のため、いたるところで麻痺し、農地は荒れ始めた。毎年当り前になった異常気象、温暖化現 象。そして、深刻な農薬汚染、農薬使用規定、化学物質の環境ホルモン化。襲いかかるO157,BSE,鳥インフルエンザ等の恐怖。禁断の遺伝子組み換え技 術。農業政策は軸足を消費者、国際マーケット対応にシフトされ、農家を売れる農産物、商品価値のある農産物の単なる生産機能集団に組み変えようとしてい る。農地を生産工場として捉え、企業の参入も時間の問題云々。日本農業を取り巻く時代変化は今までの農家の経験主義ではついて行けない状態になって来てい る。

 故郷で農業をやって生きる。本当に生きていけるのか、無い知恵を絞絞るほど不安が増えてきます。お金、知恵、労力、時間という個人資産を持ちより、協同 の原則に従って、田舎の市民セクターを育て、故郷の機能を保ちながら、どれほどの収入が必要なのか、どんな農業をやるのか、どんな仕事を興すのか。どんな 生産者とネットワークを組み、どんな都市生活者と連帯して行くか
大胆に仮説を経て、論議し、恐る恐る果敢に実践していかなければならない。今、農村は革命状態の時が流れている。

3 田舎(地域社会協同体)で働く意義(家族労働から集団家族労働へ)

 我が田舎セクターも市場経済と対峙しなければならない。当然、生産技術よりも経営能力、販売能力が問われる。研修生を含 め、3~4人ぐらいの気の会った家族の集団経営が重要となってきた。かって、親父の仕事、母親の仕事、子供の仕事、年寄りの仕事、集落の仕事等、それぞれ の仕事をして家族・地域が成り立っていた。本来、労働とは生きていくための行為であり、人生・社会教育・学習の場・生きる喜びの場・奉仕の場でもある。田 舎はそう言う働き方が出来る場所であった。ところが、労働するとお金がもらえるもので、いつの間にか、お金を得るために労働するようにった。そして、お金 だけに変えられない多様な価値が失われてしまった。効率と、競争の世界ではますます、お金万能になって来るだろう。多様な価値のある労働。それが、協同労 働です。

 私達は地域社会で生活する、仕事をする、それは、緩やかな協同労働でなければなりません。21世紀に生きていける田舎は、高齢者問題も含めて、多様な価 値を持った協同労働を如何にきっちりと組み立て、大企業に飲み込まれない事業を構築できるかにかかっています。つまり、SANTYOKU運動の再構築です。

4 農業生産資本の拡張と生産体制の充実
  (生産者責任による生産工程のデジタル管理とその開示が前提)

 農地の価値観が戦後、農地解放により農地は農家の命より大切な命を育む母なる大地であった。それが、所得倍増政策によ り、農地は資産となった。そして、農家の激減、廃園の激増により、農地は再び生産基盤となってきた。そういった意味で、農地の集約が比較的しやすくなり、 生産基盤の拡充が可能な時代になった。株式会社の農業分野新規参入も加わり、農業生産に農薬、除草剤、遺伝子組み換え等を多用しコストダウンを計り、外国 農産物に対抗しようとする方向と、「農地は健康で美味しい食べ物を生産を通して、農業者が安心して働ける場所」として、集団化、企業化し、生産基盤の拡 大、生産技術の高度化、環境に優しい農業へ意欲ある新規就農者の希望もかなえれる方向とがあろう。農業の生産基盤、地域機能は大きく、過激に変貌しようと しています。日本農業は経済を優先するか、環境を優先するかのちょっとしたさじ加減で、進む方向が大きく変わります。それは、都市の成熟社会の生活者の生 きかたに委ねられています。私達はそれに合わせて地域社会の社会インフラを整備し、楽しく生きていける地域、地域の人全員が参加できる地域社会協同組合を 目指します。

 都市の人は年中、トマト、きゅうり、レタス、キャベツ等は必要としているのだから、旬なモノを年中作るには日本列島農業者のネットワーク化が必要。つま り、生産の集団化、企業化による規模拡大と、生産技術の向上、生産体制の充実、県内農家とのネットワーク、国内農家とのネットワーク。必要ならば、農業者 間提携と都市市民セクターとの提携による国内協同出作り、国際農業者間提携による、国際出作りも時代が要求する生産者の生き方であろう。農業者は地域に根 ざしながら多岐多様な生き方を模索し、都市の市民セクターと連帯しながら、市場経済に組み込まれない、循環する社会的経済を目指す。それが真土不二、自給 自足の基本では無いでしょうか。

5 市民情報センター、市民講座開設による産直マイスター制度の確立を

 産直という言葉は相当に広い意味を抱えている。私達はその意義を[Santyoku]という言葉で表現したいと思っている。産直のトータル的発展は社会的経済を支えるであろう勢力を育て、増やし、力を付けていくだろう。そのための産直マイスター制度を提案します。

産直学校講義内容

・市民の為の正しい農薬学
・市民の為の正しい薬食同源学
・市民の為の食べ物安心安全学
・市民の為の楽しい地域資源学
・私の好きな産地学
・都市と田舎のリタイア人生学
・楽しい故郷作り
・楽しい都市と田舎のツーリズム
・都市と田舎のコミュニテイービジネス入門
・都市と田舎のコミュニテイーサービス入門
・子供たちの田舎探検隊入門
・田舎と田舎の国際交流入門
・国際貿易入門
・市民が主体の生協学入門

・皆で運用環境ISO14000(環境会計・生産工程の開示・遺伝子組み換え・環境ホルモン)入門 etc
・生産者のためのコミュニケーション農業講座(運動論・情報管理学・技術情報学・環境学)

6 人間性を破壊する市場経済と決別し、豊かな人間性の回復、地域再生のために

 

・赤旗民主主義→個人民主主義→市民民主主義
・市民が参加して官を公に取り戻す
・市民が参加して知的労働のための持続可能な地域を再生する

都市と田舎の市民ビジネス事例
=(産直マイスターの優秀な卒業生達が自分の好きな産地と取り組む市民ビジネス)

(1)フードコーデイネーターとローカルデザイナーの商品開発研究所、漬物工場、ETC
(2)都市と農村交流インストラクチャーの要請(修学旅行、結婚式場運営、家族旅行、体験旅行、知的労働者の田舎暮らし、定年帰農)
(3)社会インフラの整備と町興し→地域協同組合化(生活、介護、教育等の地域協同)
(4)情報発信のためのメーリングリスト、ブログの作成
(5)企業のリストラ労働者、個性豊かな引篭り・引篭り職員のリフレッシュ事業
(6)地場販売・直販事業・・・地元にファーマーズマーケットの開店と地元スーパー販売
(7)レストラン・ホテル、結婚式場等の御用聞き機能、予約機能、地元宅配機能
(8)量販店販売事業・・・マーチャンダイズ出来る機能(消費者動向の徹底把握)
(9)ISO14001グリーン事業等特殊販売
(10)市民が主体の国際交流・国際貿易


pagetop