今年の温州みかんの出荷がはじまったところではありますが・・・、今回は頭の痛いお話です。
私たちはなるべく農薬を使わずにみかんを作ろうと取り組んではおりますが・・・、
どうしても難しい場合には最低限は頼らざるをえないところがあります。
“難しい”とは、まともに収穫ができない、樹や園地を継続して維持できないかもしれない、という線引き。
もともと外観については皆様のご理解のもとで少々見た目が悪くともお許しいただいているのですが、
果実の中身まで損なってしまう、出荷できるものがなくなってしまう、樹が枯れてしまいそう、
といった病虫害が起こることもあります。
温州みかんでは“ソウカ病”という病害が悩みの種ではありますが、
今年はそれ以上に影響が大きい“カメムシ”の大発生に見舞われてしまいました。
果実に群がるチャバネアオカメムシ。こうなってしまうともうどうにもならない・・・。
カメムシについては皆さんご存知でしょう。
実際にはたくさんの種類がおり、あの緑色の臭いヤツはチャバネアオカメムシやツヤアオカメムシという種類です。
夏の終わりから秋にかけて、にわかに現れて私たちの生活圏に入ってくるからこそ印象に残るわけですが、
彼らはみかん山でも同じように突如大発生して果実に群がってくるのです。
カメムシの本来の生息地、繁殖地はヒノキなどの人工林です。
様々な植物に寄生する虫ではありますが、広く植えられているがために人工林が主な生息地になっています。
ところがヒノキ林で夏のはじめに生まれる新成虫の数が実(球果)に対して多く、
ヒノキを吸い尽くしてしまうと食べ物を求めて町や果樹園にやってきます。
これも実と成虫の発生数とのバランスで、年によって来たり来なかったり。
そして時には猛烈な発生となることがあります。
カメムシがみかん園にやってくる目的は他ならぬ果実です。
口から細い鞘を果実に差し込んで内側の果汁を吸い取るため、果肉を損なってしまうことになります。
まずは成熟の進んだ果皮の薄い果実にやってくることから、被害を受けやすいのは温州みかんの極早生品種。
発生数が多くなるにつれ、早生・中生のみかんへ伊予柑・ポンカンなどの中晩柑類へと影響が広がっていきます。
カメムシの被害果はないか? いくら農薬を抑えているとは言え、収穫や選別にはいつも以上に気をつかいます。
無茶々園のある明浜は近隣にヒノキの人工林が多く、
(せっかく有機栽培を志した地域なのに!)もともとカメムシの発生が起こりやすい周辺環境と言えます。
毎年少しずつはやってくるものなのですが、今年に関しては数年ぶりとなる大発生。
大半のみかん園地ではカメムシの防除を行わざるを得なくなってしまいました。
糊口をしのぐためにみかん山にやってきた挙句に駆除されてしまうカメムシも気の毒ですが、
果実にカメムシが群がる様子を目の当たりにする生産者の気持ちもいかがでしょうか。
ヒノキ林もみかん山も人の営みでありまして、カメムシの大発生に見舞われるたび何とも複雑な気持ちにさせられます。