無茶々園事務所のある旧狩江小学校にほど近い園地にこの春100本を越える苗木が植えられました。
もともとは明浜の主幹産業であった蚕用の桑が植えられていた畑でしたが、その後、温州みかん、せとかと改植し、
今年からはポンカンに挑戦するのは齢83歳になる生産者・沖村梅男、通称「梅さん」。
御年83!まだまだ現役、若い者には負けません!
畑にはすでに大きな穴がいくつも掘られていました。
無茶々園で植える苗木の多くは九州の業者から仕入れているので、
届いたらできるだけ早く植えるにかぎります。
改植を行う園地ではあらかじめ苗木を植える穴を掘っておき、
水のはった大きなたらいに届いた苗木を入れて畑に運ぶのです。
一本ずつ穴に入れ根っこに土をかけ、肥料をまき、潤沢に水を与えます。
言葉にすると単純な作業に感じられるかもしれませんが、当然そうはいきません。
「掘った穴に苗木を入れて土をかぶせるだけ、という訳ではないんよ。」
そう言うと梅さんは苗木から生えている根っこを上部と下部にざっくり分けて穴に入れました。
まずは下の根っこを土で覆い、それから残りにも土をかけていきます。
根っこ同士ができるだけくっつかないようにして、それぞれの成長を促すためです。
その他にも水が畑の表面を流れてしまわないように植えた苗木の周りには土俵のように土を盛るなど、
一つずつの作業に未来の実りへむけた工夫があるのです。
届いた苗木。根が乾かないように水につけます。
もちろん、こういった手順で進めていけば手間がかかり人手も必要になります。
この日は大学生が一人手伝いに来ていました。
初めて苗木を植えるという若者に「なんの足しにもならんと思うけんど」と笑いながら作業を教えます。
指導されるがままに鍬をふり、土をかぶせながら簡単そうに見えるのに・・・
とつぶやき四苦八苦する若者の姿を面白そうに眺める梅さん。
「(苗木を)3,000本以上は植えとるけん」と笑いながら、
土の堅さや鍬の重さなどを感じさせない軽やかな動きで苗木を植え続けていました。
苗木植えを手伝いに来てくれた大学生と。
みかんは樹齢100年を超えても実をつけるとも言われています。
とはいえ安定して収穫できるのは40年ほど。
その後は年を重ねるごとに隔年結果(※)が激しくなってくるため、計画的に改植を進めていくのです。
ただし、無茶々園では2004年に上陸した台風による塩害で多くの園地で改植を余儀なくされたことがあり、
これを機に温州みかんといった主要品種たけでなく、
思い切ってせとかや不知火など新しい品種への植え替えに挑戦する生産者が多くいました。
新しい品種を植える際には他産地を見学するなどして情報収集を行いますが、
やはり実際に植えてみることで栽培特性や土地との相性がわかります。
今回改植した園地はより栽培しやすい品種としてポンカンを選んだそう。
苗木を植え実際に収穫ができるようになるまで2年。沖村が軽やかに鋏を使い収穫する姿が目に浮かんできます。
※豊作年と不作年が交互に現れること。
植えた苗木にたっぷりと水を。
2年後の収穫が待ち遠しい。