現在、日本の農業は、農家人口の減少や高齢化、労働力不足といった様々な課題を抱えています。もちろん無茶々園もその例外ではありません。果樹は苗木の植えつけから収穫まで数年の時間を要し、ほとんどの品種が年一回しか収穫できないため、より危機感をもって課題に取り組まなければ、十年先、数十年先の産地維持は困難でしょう。無茶々園ではそうした時代の変化に対応するために、栽培マニュアル整備や早期成園化、育成品種の見直しといった取り組みを行っています。
一方、あまり話題にはなることはありませんが、果物の消費面も大きな転換点を迎えています。それは「果物を食べる人口が年々少なくなっていること」。2001年には121トンあった果物の消費量は、年々減少を続け、2010年以降は100トン程度と低迷しています。そのなかでもみかんの減少は特に大きく、ピーク時の1973年には23kgあった年間一人当たりのみかんの消費量は、2000年には6kg(約4分の1!)にまで減少しました。消費減少の理由は多々ありますが、①お菓子やアイスクリーム、ジュースといった競合商品の増加、②競合商品が増えたため果物が割高に感じられるようになった、③生活習慣の変化等により皮をむくのが面倒になったといったことが大きい要因としてあげられるようです。
この消費減少の事態にあって特に深刻なのは、若年層が果物を食べなくなっていること。特に食べ盛りの子どもがいる世帯は、主食に食費を優先的に回さざるをえず、果物を食卓に取り入れることがむずかしいようです。しかしながら、果物は習慣性が強い食べ物。家庭で食べる習慣がないと子どもが自立した際に食べなくなる傾向が強くなるそうです。このまま若年層が果物を食べる割合が減少すると、将来的に果物の消費が大きく落ち込むことは必至でしょう。
私たちが安心して栽培に励むことができるのは、消費者にしっかり食べてもらえる土壌があるから。これからも消費者のみなさんと産物を通じてコミュニケーションをとりながら生産に励んでいきたいと考えています。食べてくれる人がいなくなっては、せっかく美味しいものを汗水たらして作っても報われません。また、産地の自立・維持・継続も困難になります。この文章を読んだみなさんには、ぜひ家庭でみかんを食べていただきたいと思います。四季の豊かな日本は、古来から果物をよく食べる国でした。個人的な思いではありますが、これからも画一的ではない豊かな食文化を後世につなげていきたいと考えています。そのためには生産者、消費者ひとりひとりの主体的な行動が不可欠であります。ひとりひとりの具体的な行動をもって、日本の食卓をめぐる運命を変えていきましょう!