大都市圏を中心に急速な発展を遂げているベトナムですが、私たちが活動する中部高原の街バンメトート市にも、コンビニが少しずつ出来始めるなど、発展の波は少しずつ届いています。これ迄、この街に住む多くの人々の生活リズムは、朝市を中心に回っていました。早朝には多くの人が新鮮な肉や魚を求め、それは所得や身分に関わらず、生活の為には朝市には来なければなりませんでした。しかし、最近は多くのスーパーマーケットが出来た事で、少し裕福な人々は、スーパーの食材を冷蔵庫に保管して暮らすようになりました。また実際、生鮮品以外の調味料やドリンクなんかは、スーパーの方が安い現実もあります。
私たちの農場は、この街の東はずれにあります。それより先は少数民族の村となり、このように目まぐるしく変わりゆく街の景色と、恐らく100年前と変わらないであろう農村の狭間に存在していると言えるでしょう。そうした環境のなか、13名のスタッフ、30~50代の労働者の妻たちが中心になって運営しています。仲間の半数は、戦争時に生き延び、戦後の貧困から仕事を求めてベトナムの北中部からやって来た人たちです。同じベトナム人とは言え、そんな彼女たちと、その子の世代である30代には大きな文化や気質のギャップがあります。そして、更にそれよりも若い10~20代の世代の感覚は、日本と変わらないと感じます。
ファーマーズユニオンベンチャーの仲間たち
さて、2008年に「ベトナム有機農業センター」として設立されたファーマーズユニオンベンチャーは、2018年に10周年を迎えました。ベトナムでは5年毎に公安の厳しいチェックがあり、特に私たち外国企業への取締りは厳しく、多くの不備点を指摘されました。2019年はひと言でいうならば、過去10年分の清算の年だったと言えます。新しい事では無く、過去と向き合う辛い1年間でした。膨大な数の書類を整理し、公安や入国管理局へ赴く日々が続きました。これは私たちの過去の至らない部分と、ベトナムの法整備が日々整い、汚職の撲滅など国際水準に近づいている事の表れともいえます。バンメトート市でも、多くの役人が汚職を摘発・解雇され、多くの企業が罰せられました。また、本来の生業である農場運営や、コショウやカカオ等の輸出品の取り扱いに関しても、新しい事は基本的に行わず、不要な物を全て改め、必要な物を全て揃え、新たな気持ちに刷新する為の準備の年となりました。
そんな状況にあって、2020年に取り組もうとしている事は、ズバリ加工品の開発と販売です。私たちはこれ迄、ベトナムで多くの生産者と関わってきました。その中には日本から技能実習生として勉強して帰ってきたメンバーも沢山います。しかし残念な事に、既存の殆どの生産者が、急速に発展する社会に取り残され初めています。農業が好きで一生懸命働いても、現状の生産品目では収入が上がらず、結果、その打開策が見つからず離農しています。また、帰国した技能実習生に関しても、折角日本で学んだ事をベトナム帰国後に農業で活かす環境が少ないのです。私たちは彼らの人生に関わった以上、やはり彼らがやりがいを感じられる環境を創造したいのです。これまでコショウを中心にそういった活動を行ってきましたが、やはりそれだけでは足りません。だからと言って、土地や気候に合わない物を生産する訳にもいかないし、その他の条件も限られています。彼らがもともと持っているコショウを、乾燥だけではなく、生コショウなどの商品に加工していく。そ例外にも加工にも対応できる(例えば油を搾れる)作物を中心に取り扱いを増やしていこうと考えています。その為には先ず、小さく素早く、色々な可能性を探りながら、トライ&エラーを繰り返しながら、着実に実行を行っていく1年にしたいと思っています。皆さん、ぜひベトナムのメンバーを応援・お力添えをお願いします!
ファーマーズユニオンベンチャー 髙埜 太之