お知らせ

無茶々園の農薬事情(夏)

2020.07.25

明浜では4月下旬には柑橘の花が開き始め、5月連休頃にかけて満開を迎えます。花弁が散って顔を出すのが小さな果実。この幼果が半年をかけて甘いみかんへと成長していきます。梅雨から夏にかけては一年で一番気温が高く、降雨量も多く、植物の成長に勢いもつく季節。昆虫や細菌類の生命活動も盛んになり、畑のなかでは農作物の病害虫として農家を悩ませます。前回、冬から春の農薬事情についてお話しした通り、無茶々園の行っている栽培と一般的な栽培とでは春までは大きな違いはありません。しかし、初夏を過ぎると全く違った管理となっていきます。

 

写真は摘果作業。ジメジメとした暑さの中での作業は大変です。

 

一般栽培では愛媛県内の基準では18回の化学農薬使用が標準とされますが、この大部分が夏の間に行われます。まず開花期に蜜を求めてやってくる訪花昆虫の駆除。虫が足で子房(幼果)に傷をつけてしまうのを防ぐためです。(ちなみに柑橘類はほとんどの品種で自家受粉しますので、受粉目的でミツバチの導入を行うことはありません。)その後、ハダニ、アザミウマ、カイガラムシ類、サビダニ、ミカンハモグリガなど多様な虫害への対策を行っていきます。一方、細菌類が原因となって発生する病害では、一般栽培で最大の防除対象になっているのが黒点病です。無茶々園のみかんには必ずと言っていいほどついている小さな黒いポツポツが黒点病の痕跡。市場で外観品質を評価するうえでは重要なポイントになっています。雨で胞子が流れて感染を広げることから、梅雨から秋雨の時期までに継続して防除が行われ、18回のうちの1/3は黒点病対策といえるほどです。

 

さて、無茶々園では農薬の回数を最低限に抑え、夏季の防除回数はそう多くはありません。春の対策と同じカイヨウ病対策の銅剤やカイガラムシ対策のマシン油を引き続き行うほか、特別に問題になりそうな虫の対策を行うことがあります。

 

もっとも手強いのはゴマダラカミキリムシ。みかん畑に現れる害虫の中では最大級の昆虫です。果実を食べるわけではないのですが、幹に産卵し、孵化した幼虫が樹の内部を食べてトンネル状にくり抜いていきます。このトンネルが広がると樹が衰弱し、度々産卵されると大きな樹でも枯死してしまいます。孵化がはじまる5月下旬から成虫が現れますが、柑橘産地では見つけ次第捕殺するのが常識になっています。無茶々園でも成虫の捕獲推進を行っているほか、産卵箇所への対策として幹の根元に農薬を用いる園もあります。

 

ゴマダラカミキリムシ。みかんの樹の天敵であります。

 

もう一つ夏の間に問題になるのがサビダニです。名前の通りダニの一種で、柑橘に寄生して果実の表皮を加害し、外観を悪くしてしまう特徴があります。非常に小さいため目視では見えにくく、気がついたら果実に被害が広がっているのが厄介です。そのため前年にかなり被害が出た園地では越冬個体が潜んでいる前提での対策を進めています。サビダニの防除では、イオウフロアブルのような天然鉱物由来の農薬を用いることが多いのですが、多発する場合には化学農薬で対応することもあります。

 

サビダニ。果皮が褐色に変色します。

 

こうして、夏の間は問題の大きな病虫害にピンポイントで手を打っていくのが無茶々園の防除体系。一般的な栽培とは大きな違い出る季節です。次回は秋から初冬にかけての農薬事情をお伝えします。

 

▼次回の記事はこちら

無茶々園の農薬事情(秋)

▼前回の記事はこちら

無茶々園の農薬事情(冬から春)

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