お知らせ

柑橘の貯蔵

2021.01.16

愛媛の柑橘はちょうどお正月を境にして温州みかんから中晩柑へと主役が変わります。日本で栽培されている柑橘は大きく分けて「温州みかん」と「温州みかん以外」で区別され、温州みかん以外の柑橘を総称して中晩柑と呼んでいます。(このほかにもレモンや柚子などの香酸柑橘があります。)

 

中晩柑では採りたての果実を発送することは少なくなり、収穫してからある程度貯蔵した果実を出荷します。年内のみかんが収穫してからあまり時間を置かずに出荷されるのとは対照的です。

 

倉庫で貯蔵中の柑橘。

 

中晩柑を出荷直前に収穫しないのには理由があります。厳冬期には愛媛でも気温が下がり、強風が吹き荒れ、時には雪になります。寒害・凍害を避け、風による落下に見舞われる前に収穫しなければせっかくの果実がダメになってしまいます。また、採りたての果実は酸味が強く、貯蔵中の呼吸によって酸味を落ち着かせて食べやすくすることもできます。

 

貯蔵のポイントになるのは果皮からの水分の蒸散。採りたての果実は皮の水分が多く、そのまま貯蔵してしまうと蒸れて傷みも出やすくなります。乾燥予措(かんそうよそ)といって、数日間風通しの良い場所に置いて果皮の水分を飛ばし、パリッとした採りたての状態からしなかやな果皮にして倉庫に仕舞い込みます。あとは温度と湿度を見ながら、出荷までの1~2か月間を倉庫内で過ごしていくことになります。

 

収穫してまもない伊予柑。まだ青みがかっています。

乾燥予措をすることで酸が抜け、色づきも進んでくるのです。

 

残念なことに無茶々園のみかんはこの貯蔵中に果皮がしなびやすい特徴もあります。あまり農薬を使用しないために病虫害の影響を受けやすく、病虫害の痕跡が果皮に微細なキズや穴をつくり、表皮につくられる天然のワックス層の形成も薄くなるために、果皮からの蒸散量が多くなるためです。ひと昔前までみかんに人工的にワックスをかけていたのは、見た目の艶を求めるほかにも蒸散を抑える目的もあったわけです。

 

中晩柑のなかにもあまり貯蔵を行わない品種もあります。果皮が薄くてしなびやすい「せとか」などは貯蔵期間を短くしているほか、「ジューシーフルーツ(河内晩柑)」などは出荷時期が遅いため春まで樹上に置いて出荷前に収穫しています。こういった品種では果実に袋やネットをかけるなどして、冬の寒さや鳥の食害を防ぐ対応が必要な場合があります。

 

農業では成熟させて収穫すれば終わりではなく、その後の管理によって出来映えや成果が大きく変わってしまうことがあります。地味な作業ではありますが、貯蔵や倉庫での管理はみかん農家にとって大切な仕事のひとつです。

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