ベトナム

ベトナムで生きる、働く(第7回)

2021.03.10

こんにちは、ベトナムのFarmers Union Venture(ファーマーズユニオン・ベンチャー)の髙埜太之です。「ベトナムの仕事と暮らし」をテーマに、私がここで行っている活動や暮らしている上で見たり感じたりしたエピソードをお伝えしております。今回は私たちが暮らすベトナムのダクラク省最大の特産物、コーヒーについて紹介していきます。(6回目はこちらから)

 

 

世界最大のコーヒーの街、バンメトート市

自分たちが暮らすベトナムのダクラク省バンメトート市は、世界有数のコーヒー産地であり、FUVのスタッフの実家の多くが現在でもコーヒー農家です。毎年2~3月の花が咲く季節になると街中がコーヒーの花の甘い香りに包まれ、幻想的な雰囲気に包まれます。

 

コーヒーの世界生産量の約30%を占めるブラジルは、広大な国土に産地が点在しているのに対し、ベトナムは世界生産量の約20%を、中部高原という限られた地域で生産しています。さらにベトナム産コーヒーのうちの40%がここダクラク省産であり、これはひとつの国のたったひとつの省が、コーヒーの世界生産量の約8%を担っている計算となります。このため、この街から出荷されたコーヒー豆は、世界中のコーヒー消費者が既に口にしており、皆さんも知らないうちにダクラク省産のコーヒーを飲んでいる可能性はとても高いのです。

 

 

コーヒーフラワー。開花は2月~3月にかけて。

 

ベトナムコーヒーの歴史

150年ほど前、ベトナムはフランスの統治下にありました。当時のベトナムではコーヒーを飲む文化はありませんでしたが、フランスはここがコーヒーの生産に適していると判断し、フランスに出荷用のコーヒー豆としての栽培を開始しました。その後、ベトナムが独立してからは、自国の為にコーヒーを生産するようになりました。

 

この様にベトナムのコーヒーの歴史は150年以上ありますが、生産量が爆発的に高まったのは今から30年ほど前のドイモイ政策後のことです。ベトナム国営企業は全国からダクラク省でコーヒーを生産してくれる人々を募集・誘致し、それまで森林だった地域を開墾してコーヒーの生産をはじめました。

 

この結果、ベトナムは世界第2位のコーヒー大国へと成長する事となりました。しかしベトナムの気候上、高付加価値な豆であるアラビカ豆の栽培には向いておらず、安価なロブスタ種が中心となるため、世界最大の産地でありながら、産地のブランド化が出来ないという苦悩を抱えています。

 

 

コーヒー豆の収穫は11月~12月。

 

ロブスタ種について

ベトナムで栽培されているコーヒーのほとんどがロブスタ種という品種です。このロブスタという品種名の由来は英語の「Robust(たくましい)」から来ており、その名の通り、標高500~1000mといった、アラビカ種よりも標高が低く、温暖な地域での栽培に適しており生命力に溢れ病気に強い品種です。

 

焙煎したときのコーヒーの素晴らしい香りや酸味が特徴のアラビカ種と比べ、ロブスタ種はパンチ力のある深い味わいが特徴です。この為、コーヒーのブレンド豆には土台の味を担う役割として配合されます。

 

収穫したコーヒー豆。品種は「ロブスタ種」。

 

コーヒーの栽培について

コーヒーの樹の寿命は30年ほどですが、この辺りでは20年を過ぎると徐々に収量が減ってくるので、植替えを行っています。樹高が高くなりすぎると作業が大変なので、基本的には2m程度で枝が開帳するように抑えて栽培します。基本的な枝の剪定作業に加え、雨季には除草作業、乾季には灌水作業が中心となります。収穫は毎年12月には行います。収穫した豆を庭先で発酵・乾燥させたら皮を剥き、生豆の状態で袋詰めして出荷となります。

 

 

自家消費用コーヒー豆は自宅で焙煎(上)。焙煎されたコーヒー豆(下)。

 

コーヒーやコショウ、カカオなど、ベトナムには様々な農産物があります。国として輸出に力をいれていることもあり、近年は品質もどんどん向上しています。いまは取り組んでいませんが、ゆくゆくは生産者の顔が見えるコーヒーも日本に送り出していきたいもの。その際はみなさまご協力よろしくお願いします!

(つづく)

ベトナムで生きる、働く(第8回)

pagetop