段々畑を歩いていると様々な景色を見ることができます。積み上げられた石垣、転げ落ちそうなほど急な坂に育つ柑橘、目の前に広がる穏やかな宇和海といった美しいものだけではなく、危険とかかれた看板とともに取り付けられた電気柵に侵入を防ぐため畑一面を囲うように設置されているワイヤーメッシュなど野生動物との知恵比べの跡もあります。
ここ西予市でも年間4,000万円を超える獣害がでており特にイノシシによる農作物への被害が最も多く、被害地域も沿岸部から山間部にかけて市内全域に及んでいます。 被害が深刻化したのは1998年ごろからと言われており、被害の内容も稲・野菜・飼料・果樹の食害、枝折れ、石積みの破壊等多岐にわたっています。行政も捕獲したイノシシの買い取りや防護柵購入の補助なども行っていますが依然として多くの被害がでているのが現状です。
イノシシ除けのワイヤーメッシュ。
無茶々園の生産者も被害を抑えるべく工夫していますが「獣道に箱わなを仕掛けても通り道を変える」「ワイヤーメッシュを仕掛けても壊したり穴を掘ってくぐって侵入」したりするのは日常茶飯事。上の写真はワイヤーメッシュでぐるりと囲まれたひょう柑畑で2,500kgほどの収穫を見込んでいますが「へたしたら一晩で全部食べられる」というのが生産者の見立てです。イノシシが「これ以上食べたら人間が嫌になって食べ物(柑橘)を作らなくなるかもしれない」という知恵を働かせてくれるのを待つしかないのでしょうか。
イノシシに食い荒らされたみかん。
害獣対策にも様々ありますが狩猟で得た天然の野生鳥獣の食肉を意味し、ヨーロッパでは貴族の伝統料理として古くから発展してきた「ジビエ」への関心が高まっています。肉のもつ味わいだけでなく、ジビエを食べることが持続可能な開発目標(SDGs)にもアプローチできるのではないかという新たな視点も生まれています。例えばジビエを食べることで食肉の輸入を減らし輸送時に必要だったエネルギーを削減することが「気候変動に具体的な対策を」につながるという考え方です。無茶々園では販売許可や添加物の問題などがあり今はまだ食肉として流通させるに至りませんが新たな知恵の結晶となるのも夢物語ではないかもしれません。