年明けから、嬉しい連絡が続きました。リニューアルした「伊予柑しっとり石鹸」がサスティナブルコスメアワードの最高賞にあたるGoldを、続いて総務省主催のふるさとづくり大賞にて無茶々園が団体表彰を受賞しました。
サスティナブルコスメアワードは商品の品質とともにSDGs(持続可能な開発目標)の理念を選考基準に採用し「人にも地球にもやさしいコスメ」を表彰するものであり、受賞にあたり商品(石鹸)の品質の高さとともに、40年を越える「持続可能な地域づくり」を目指してきた無茶々園の取り組みを評価いただきました。
ふるさとづくり大賞は全国各地で、それぞれのこころをよせる地域「ふるさと」をより良くしようと頑張る団体、個人を表彰することにより、ふるさとづくりへの情熱や想いを高め、豊かで活力ある地域社会の構築を図ることを目的としています。
柑橘の有機栽培から
伊予柑の有機栽培の実験園地を作る。無茶々園は1974年に地元農業後継者グループの小さな取り組みとしてはじまりました。ちょうど環境汚染が社会的に注目されはじめた時期であり、柑橘産地の農家にとっては生産過剰と価格低迷に苦しんでいた頃です。当時珍しかった有機栽培には思いのほか反響があり、安全な食べ物を求める消費者や団体との接点を得て、販売機能を持った生産者団体として歩みはじめることができました。
私達の住んでいる愛媛県西予市明浜町は、宇和海に面して小さな入り江が連なるリアス式海岸。起伏が多く平地が少ないため、急斜面を開墾して段々畑を築き、小さな集落で農業と漁業を中心とした営みを行ってきた地域です。効率的な農作業は望めない条件ですが、戦後は段々畑に苗木を植えて柑橘産地として歩んできました。無茶々園は実験園として生まれて以来、環境保全型農業と直販・産直を通じて、この田舎から存在意義を発信するとともに生産販売の事業を拡げています。
事業と運動を両輪として
しかし、柑橘の有機栽培だけをゴールにしてきたわけではありません。広く地球環境を見据えたエコロジカルな取り組みを地域の暮らしや営みに落とし込み、持続力のある地域を作ってゆく運動だととらえています。地域の環境を良くするには、山(畑)だけではなく目の前に広がる海も大事です。地元の漁業者と連携して産物の販売とともに環境維持活動を行い、地域の農業者と漁業者が共存する組織になりました。
その他、農業後継者の減少を見据えて20年以上前から農業体験や新規就農の取り組みをはじめ、新規就農者だけで経営する農業法人を作り、柑橘を生かした商品開発では、捨てられていた加工用柑橘の皮からエッセンシャルオイルを抽出し、このオイルを使ったコスメの商品ブランドを立ち上げました。さらに過疎化、高齢化が進む地域に不可欠なインフラとして福祉事業所を開設し、農業団体が運営する福祉施設として地域住民にも多くのサービスを提供しています。
こうしてさまざまな課題や問題意識をもとに新しい事業を作り、数多くの失敗も経験しながらも、いまでは農業者や漁業者のほかにも100名以上のスタッフが参画するグループとなっています。
持続可能な田舎のモデルとなる
いま様々な分野で持続の可能性を高めることが世界的な目標となるなか、環境省の地域環境共生圏、農林水産省のみどりの食糧システム戦略など新たな政策も打ち出され、私達の取り組みもその一つのモデルとして認められてきたのかなと感じています。
高齢化や農業後継者不足、温暖化など地域の課題は尽きることがなく、都会とのバランスでもまだまだ急な傾斜が存在しています。実験園からスタートした原点を忘れずに新たな種をまき、運動や事業自体が持続可能な地域づくりとなって、この田舎で自立して豊かに暮らしていくように取り組みを続けていきます。