なめらかでしっとりとした使用感と、さっぱりとした甘夏の香りが人気商品の「甘夏なめらかバーム」。どんな人たちが、どのような工程で、どんな想いをもって作っているのでしょう。気になるところについて、作り手であるあおぞらソラシードさんに聞いてみました。
-回答してくれたひと
あおぞらソラシード化粧事業部 酒井政典さん、船山美久璃さん
-あおぞらソラシードさんはどんなところですか。
私たちは、新潟県にあるNPO法人です。正式な名称は「NPO法人あおぞら」。「障がいのあるなしに関わらず、楽しく働き、楽しく暮らそう」をビジョンに掲げています。活動をはじめて19年、法人化して14年の組織です。
拠点は新潟市2か所と阿賀野市2か所、あわせて4か所。85名の障がいのある利用者が所属しています。化粧品の製造を行っているのは阿賀野の事業所「あおぞらソラシード」です。化粧品事業部には13名が所属。他にも薪ストーブ・ペレットストーブの着火剤をつくるチーム、温泉、農園の運営を行うチーム、化粧品原料に使うハーブの栽培に取り組むチームがあります。
新潟の拠点では、チョコレートの製造・販売、企業のお手伝いに行く施設外就労を行っています。
※2022年3月時点の情報です。
-化粧品づくり、バームづくりをはじめてどれくらいですか?
化粧品づくりをはじめたのは、いまから11年ほど前。雑貨(アロマミスト)の製造からはじめ、その翌年から化粧品事業に取り組むようになりました。
バームの製造をはじめたのは8年くらい前。無茶々園のバームは2014年10年から製造しているので、バームづくりをはじめてすぐに請け負った仕事のひとつです。長い間繰り返し作っているので、みんな強い思い入れを持っています。
-なぜ、化粧品づくりに取り組み始めたのですか。
私たちは、もともと越後スギの加工の下請けを請け負う事業を行っていました。しかし、下請け一本だと利用者の工賃がなかなかあがらない。また、東日本大震災の影響もあって、下請けの仕事自体も減少傾向。このままではいけない、自立した仕事づくりをしようという意識が高まっていたことが、そもそもの背景としてありました。
そんななか、アルデバラン株式会社代表の暮部氏(yaetocoの製造販売元)と出会いました。担当者のひとりが以前勤めていた施設で廃油石鹸を作っており、それを化粧石鹸にしたいという夢を持っていたので、アポイントをとって打ち合わせをすることになったのです。その打ち合わせの際、スギの端材を見て、まずは越後スギを使ったアロマミスト(消臭スプレー)を作ってみてはどうかという提案を受けました。実際に試作品を作ってみて、きちんとしたものを完成させることができたことも大きな自信となり、自分たちによる仕事づくりが始まったのです。それと同時期に、助成金を受けることもできたことも助かりました。それによりしっかりした設備投資ができ、ここまできたらせっかくなので雑貨だけではなく、化粧品にも取り組もうという流れになったのです。
アルデバラン株式会社暮部氏(左から3番目)といっしょに。
-みなさんの作るバームのこだわり、良いところを教えてください。
私たちの化粧品づくりは、利用者が主体となって作ることを前提としています。主体をもって作っているので、商品ひとつひとつに思い入れがある。繰り返し注文がくると利用者もうれしいようです。無茶々園さんのバームは、さわやかな甘夏の香りがとても印象的。注文がくると利用者のみんなもすごく喜んでくれます。
-yaetocoのバームはここがよい!という点があれば教えてください。
やはり使いごこちのよさでしょうか。なめらかでしっとりとした使用感が一番の自慢です。そして、甘夏精油のさわやかな香り。ブレンドされた香りでは出すことができない、広がりのある芳香は魅力的です。製造室のとなりにある包装室までふんわり香ってきて、作業していてもなんだかうれしくなります。また、発色のよいイエローもきれいですね。これはサジー(ヒポファエラムノイデス果実油)で出しているのですが、同じ色がきちんとでているか毎回丁寧に確認しています。
あと、シンプルにデザインがかわいい。小さいので鞄の中にいれても邪魔にならないのも良い点ですね。
しっとりなめらかな使用感。さわやかな香りにかわいいデザイン。魅力いっぱいのバームです。
指先に唇、踵のケアまで。いろんな部位に使える万能アイテムです。
-バームはどうやって作っていますか?製造工程を教えてください。また、工程のなかで一番難しい(気をつかう)ポイントはどこですか。また、バームを1ロット作るのに、どのくらいの人がどのくらいの時間をかけていますか。
製造工程ですが、まずは原料になるコーン油、ミツロウなどを溶かし込み、そこにハチミツやパールなどを加えてベースを作ります。翌日、固まったベースを再加熱して溶かしたら、そこに甘夏精油を加えます。最後に精油をいれるのは、甘夏の香りが飛ぶのを防ぐためです。この状態で容器に詰め込み、半日ほど自然冷却して、ふたたび固めます。
ミツロウにコーン油、ハチミツなどを加えてベースを作ります。
難しい工程はあまりありません。誰でも作れるように作業の標準化をしています。強いて難しいというならば、容器に注ぐところ。泡立たないようにゆっくりいれるくらいでしょうか。使用感と香りのよさ、きれいな色あいが損なわれないように注意を払っています。
1,000個作るとすれば、製造で3人くらい、包装で4~5人が関わります。できあがりまで3~4日くらいです。
適切な配合量が出来上がりを左右します。計量は非常に重要な作業です。
温度管理にもよくよく気を配らないといけません。
充填のようす。重量も確認しながら、ひとつひとつ慎重に行います。
何をどのように使用したのか、記録を確実につけています。
包装、検品もしっかりと。シールやスリーブの汚れはわりと確認が難しいのです。
-こう使うといいよ、保管にあたっての注意などあれば教えてください。
唇、手指、踵、どこにでも使えるなめらかな軟膏です。最近は手を洗う回数が増えているので、指のささくれや爪まわりのケアによいと思います。また、甘夏の香りがとてもさわやかなので、練香水のように使うのもいいかもしれません。
仕様や保管時の注意点ですが、一番はべっとり濡れた指先で使用するのは避けること。品質の劣化につながります。また、色がぬけやすいので、直射日光や照明に長時間当たるところに置いておくのは避けてください。
-最後に消費者のみなさんへ一言お願いします。
このバームを作っている利用者のみんなは、とにかくいい商品を届けたいとの思いで一生懸命です。ひとつひとつの製造工程を丁寧に行い、記録もひとつひとつ間違わないようとっています。
なめらかな使用感、甘夏の豊かな香りが自慢のバームですが、その品質の背景には利用者の地道な頑張りがあるのは間違いありません。いろんな部位にバームを使いながら、その想いを感じていただけるとうれしく思います。
あおぞらソラシード利用者のみなさん。ひとりひとり丁寧に仕事に取り組んでいます。